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抜け穴だらけ 派遣法改正で労政審が答申
法案作成・国会で抜本改正を

 政府・与党は、開会された通常国会に労働者派遣法改正案を提出する予定ですが、それに先立ち昨年末、厚生労働省の労政審が、「今後の労働者派遣法の在り方について」、厚生労働大臣に答申しました。答申は、2008年末来の製造業などでの「派遣切り」にたいする社会的批判や労働組合と労働者のたたかいを一定反映したものですが、登録型派遣・製造業派遣禁止ともに重大な抜け穴があり、国会段階でのたたかいが重要となっています。
 第1に答申は、大きな問題となった製造業派遣について「原則禁止」としながら、「常用雇用の労働者派遣」を「雇用の安定性が比較的高い」として例外としています。しかし、この「常用雇用」は、「期間の定めのない雇用」を意味するものではありません。
厚生労働省のこれまでの考え方だと契約を反覆し一年をこえていれば「常用雇用」と見なされます。これでは現状とほとんど変わりません。
 第2に、登録型派遣についても原則禁止といいながら、専門26業務などについては、「雇用の安定等の観点から問題が少ない」と言い切り、従来どおり適用除外されています。この間、専門業種違反の事例が多く報告され、ファイリングの業務や事務用機器操作の業務など、専門的とは言えないものも含まれる問題を無視しています。
 第3に、偽装請負や二重派遣、期間制限違反など違法派遣の場合における派遣先企業への「見なし雇用規定」については、派遣先企業に直接雇用されたものと見なすのではなく、「直接雇用を申し込んだものと見なす」にとどまっています。
しかもそれさえ、「違法であることを知りながら」派遣労働者を受け入れた場合というふうに限定され、その際の雇用条件は「派遣元における労働条件と同一」というもの。派遣元・派遣先企業が「違法とは認識していなかった」などとうそぶいた場合、しばりをかけられない事態となりかねません。
第4に、「均等待遇」についても、派遣元にたいする「マージン率の公開」「派遣労働者への派遣料金(賃金)の明示」にとどまっています。労働者派遣を実質的に規制する力となる正規雇用労働者との「均等待遇を」との声はまったく無視されたかたちです。また、昨年の民主など「三党案」にあった派遣先の団交応諾義務についても明記されていません。
 第5に、内容もさることながら、その実施も先送りしようとしている点は重大です。施行期日について答申は、法の公布の日から、登録型派遣については最長五年間、製造業派遣についても三年間の「猶予期間」を設けるとしています。一昨年以降「派遣切り」が慢性化し、大量の路上生活者まで生み出している現状を無視したものです。
 「常用雇用」派遣の製造派遣を認める内容などにたいし財界側委員から歓迎するとの声があがっていることでも明らかなように、答申は、大企業・派遣先企業の責任を不問にするものであり、派遣労働者の雇用と権利をめぐる実態や、私たちの要求からするときわめて不十分なものです。
 通常国会への法案提出作業・国会審議を通じ抜本的な改正がはかられるよう、署名・国会要請など強化する必要があります。(2010年1月20日付「金属労働新聞」)


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